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AI医療機器の承認とCRO活用のポイント

AI医療機器の承認取得プロセスを日本・米国・欧州の主要規制に基づいて解説します。革新的なAI技術を医療現場で安全かつ効果的に活用するためには、各国の厳格な規制をクリアする必要があります。クラス分類の決定から臨床試験の設計、申請書類の作成、承認後の管理までの一連の流れを、最適に進めるためのポイントを見ていきましょう。

AI医療機器の承認が求められる背景

AI医療機器は、診断や治療支援に革新的な価値をもたらす一方、人命に直接関わる製品であるため、安全性と有効性の確保が不可欠です。なぜ承認が求められるのか、その背景を確認してみましょう。

医療現場への貢献度

  • AIを活用した画像解析や診断支援により、人手や時間の不足を補い、医療従事者の負担を軽減できる。
  • 患者の早期発見や重症化防止に寄与し、医療の質向上にも大きく貢献。

厳格な規制への対応

  • AI技術特有のブラックボックス化やバイアス問題を考慮し、規制当局はより詳細なエビデンス提出を求める傾向にある。
  • 信頼性が認められることで、医療機関や患者の安心を得られ、市場競争力も向上する。

承認取得プロセスの全体像

AI医療機器の承認取得プロセスは、通常の医療機器よりも複雑になりがちです。ここでは、クラス分類の決定から臨床試験、申請書類の作成、そして承認後の管理に至るまでの全体像を概観します。

クラス分類の決定

AI医療機器をどのクラスに分類するかは、最初に行う重要なステップです。リスクレベルに応じて必要な審査や提出書類が異なるため、早期に方向性を定めることが求められます。

日本(PMDA)の場合

  • 医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき、クラスI~IVに分類される。
  • ソフトウェア単体の医療機器(SaMD)として扱われるケースが多い。

米国(FDA)の場合

  • クラスI~IIIまでのリスクレベルに応じ、510(k)やDe Novo、PMAなどの手続きを選択。
  • AI特有の継続学習モデルへの対応ガイダンスも整備が進んでいる。

欧州(CEマーク取得)の場合

  • MDR(欧州医療機器規則)に基づいたクラス分類に従って審査を受ける。
  • 欧州ではソフトウェア医療機器の区分も強化されつつある。

ポイント

  • クラスが高まるほど求められるエビデンス量や審査の厳しさが増すため、早い段階で事前相談を行い、適切な分類を見極めることが重要。

臨床試験の設計

AI医療機器としての価値を証明するには、臨床試験によるデータの裏付けが不可欠です。ここでは、試験の目的やデザインをどのように構築すればよいかを確認します。

目的設定

  • AIが実現する診断支援や治療サポートの効果を数値化・客観評価する。
  • 例えば「診断精度の向上」や「解析時間の短縮」など、明確なエンドポイントを設定。

試験デザイン

  • ランダム化比較試験(RCT)や前後比較試験など、製品特性に合った方法を選択する。
  • 学習データのバイアスや過学習をチェックする仕組みをあらかじめ組み込む。

データの品質管理

  • 多様な患者層からデータを収集し、モデルの汎用性を高める。
  • 十分なサンプルサイズを確保し、統計的に有意な結果を得る。

ポイント

  • 開発段階から臨床現場の専門家や倫理委員会と連携し、適切な試験デザインを組むことで、後の申請がスムーズになる。

申請書類の作成

承認申請の段階では、技術文書や臨床評価報告書などの多岐にわたる書類を用意する必要があります。AI独自の学習プロセスやアップデート方針をどう明確に示すかが鍵となります。

技術文書の作成

  • アルゴリズムの設計思想やデータ管理方法、検証結果などを具体的に記載。
  • バージョン管理や変更点の記録も含め、将来のアップデートを見越した内容を盛り込む。

リスクマネジメント文書

  • ISO 14971などに沿って、考えられるリスクと対策を体系的に整理。
  • AI特有のバイアスリスクや誤検出リスクも詳細に洗い出す。

ユーザーマニュアル・使用説明書

  • 医療従事者が正しく使いこなせるよう、具体的な操作手順や注意点を記載。
  • 教育やトレーニングプログラムの要件も明確に示し、安全な使用をサポートする。

ポイント

  • 各国の当局が求めるフォーマットや要件を事前に把握し、一貫性のあるドキュメントを作成する。
  • 承認後のバージョン更新時にも書類をアップデートし、常に最新情報を提供できる体制を整える。

承認後の管理

AI医療機器は、一度承認を得てもゴールではありません。継続学習やデータ追加によるモデルの改変に伴い、承認後も適切な管理が求められます。

AIモデルのアップデート

  • 新たな学習データ導入で性能が変化する場合、再申請が必要になる可能性がある。
  • バージョン管理や変更点の追跡をシステム的に行い、安全性・有効性を担保。

市販後調査(PMS)

  • リアルワールドデータを収集して、不具合や副作用(ソフトウェア不具合)の早期発見に努める。
  • 収集した情報を次期モデル開発や製品改善につなげる。

規制要件への継続対応

  • 各国の規制当局がアップデートする新ガイドラインに対応し、書類や運用を修正。
  • 長期的な信頼性確保とブランド価値向上に直結する。

ポイント

  • 承認後のフォローアップを軽視すると、重大な不具合や信頼性低下につながりかねない。
  • 定期的なモニタリングと迅速な対応が、AI医療機器の継続的な品質向上に必須。

承認取得をスムーズに進めるための戦略

ここまで紹介したプロセスは、どれも高度な専門知識と煩雑な書類対応を要します。承認取得の効率化を図るための戦略として、医療機器CROの活用が注目されています。

専門性の活用

  • 規制当局との折衝や臨床試験運営に精通し、書類作成から申請手続きまでをサポート。
  • AI医療機器特有のバイアス検証やバージョン管理への知見を持つCROも増えている。

リソースの有効活用

  • 自社はコア技術や製品開発に集中でき、時間やコストを最適化できる。
  • グローバル展開を視野に入れる場合も、各国の承認プロセスを並行して進める支援が可能。

プロジェクトマネジメントの強化

  • 開発初期からCROを活用すれば、臨床試験デザインや申請書類作成を無理なくスケジューリングできる。
  • リスク対策やスケジュール管理を一元化し、承認取得までの見通しが明確になる。

まとめ

AI医療機器を医療現場で安全に利用するためには、徹底した臨床評価と厳格な規制対応が求められます。日本・米国・欧州それぞれの規制要件を理解し、クラス分類や臨床試験、申請書類の作成、そして承認後の管理までを円滑に進めることが不可欠です。特に、バージョンアップが頻繁に行われるAI技術ならではの課題は、承認後の維持管理においても大きな比重を占めます。

承認取得を効率的に進めるうえで、医療機器CROが提供するサポートは大きな利点となります。専門家の知見やプロジェクトマネジメントを活用することで、開発企業はコア技術に集中しつつ、厳格な規制要件をスムーズにクリアする道筋を確保しやすくなります。安全性・有効性を担保しながら早期に製品を市場導入できれば、多くの患者や医療従事者にとっても大きな価値をもたらすはずです。

THREE SELECTIONS
⽤途で選ぶ医療機器CRO3選
医療機器向けのCROとしてサービスを提供している会社の中から、「医療機器(デジタル領域)」「医療機器(器具‧用品)」「細胞治療製品」の3つの用途に分けて、おすすめの会社を紹介します。
医療機器(デジタル領域)
開発なら
マイクロン
マイクロン
引用元:マイクロン公式HP
(https://micron-kobe.com/)
対象
  • スマホ、PCを介した医療系ソフトウェア
  • 診断、治療目的のヘルスケアアプリ
  • AIを使った疾患の予測、診断プログラム など
CROの特徴
  • 40件以上のプログラム医療機器(SaMD)の開発実績、アイデアを形にするべく支援
  • CTやMRI、ヘルスケアアプリまで、様々な診断・治療プログラムを開発
医療機器(器具‧⽤品)
開発なら
シミック
シミック
引用元:シミック公式HP
(https://www.cmicgroup.com/)
対象
  • 血管吸引カテーテル、ステントグラフト等の機械器具
  • 造影剤用輸液セット、インスリン注入器等の医療用品
  • インプラント、歯科用ユニット等の歯科材料 など
CROの特徴
  • 30種類以上の医療機器の受託開発実績、多種多様な製品開発が可能
  • 医薬品と医療機器、化粧品と医療機器等、分野を超えた同時開発が可能
細胞治療製品
開発なら
IQVIAサービシーズ
ジャパン
IQVIAサービシーズジャパン
引用元:IQVIAサービシーズジャパン公式HP
(https://www.iqvia.com/ja-jp/locations/japan)
対象
  • 皮膚再生製品
  • 神経系再生製品
  • 循環器再生製品 など
CROの特徴
  • 再生医療分野において166以上の試験、6,600例以上の実績
  • 国内外の再生医療等製品の開発・薬事を熟知しているグローバル企業

【このサイトに掲載する会社の選定条件】
2023年2月7日時点、「医療機器 CRO」とGoogle検索して表示された企業、および一般社団法人日本CRO協会の会員企業の中から医療機器向けのCROとしてサービスを提供している22社を掲載しています。
【3選に掲載する会社の選定条件】
22社の公式HPを調査し、以下の条件で3社を選出しました。実績・種類はすべて2023年4月時点のものです。
マイクロン…SaMDの実績(40件)が最も多い。
シミック…第一種製造販売業許可(許可番号:13B1X10146)を取得しており、受託開発した医療機器の種類が最も多い。
IQVIAサービシーズジャパン…再生医療分野において166以上の試験、6,600例以上の実績があり最も多い。