医療機器メーカー・ヘルスケア企業・ベンチャー・スタートアップ企業向け「医療機器CROガイド」 » 医療機器の受託開発機関「CRO」とは? » 医療機器CROによるリソース不足や人材不足の補完サービスとは?

医療機器CROによるリソース不足や人材不足の補完サービスとは?

医療機器開発プロジェクトの企画において、最初の大きな課題となるテーマが人材をはじめとしたリソース不足。とりわけ人材確保の難しい中小企業やスタートアップ企業では、社内に臨床試験や薬事申請の専門家を育成することは、現実的に困難でしょう。

リソース不足の壁をクリアしながら医療機器開発プロジェクトを推進できる有効な選択肢が、CROのサポートの利用。医療機器の市場投入まで効率的な進捗が期待できることに加え、トータルでのコスト削減にもつながる賢明な選択肢です。

専門知識を持つ人材の提供

臨床開発や薬事申請に必要な専門人材

CROは、臨床開発や薬事申請に必要な専門的人材を企業へ提供します。専門的人材の例として、主な4種類を見てみましょう。

臨床開発担当者

臨床試験全体の設計、および運用を担当する専門家。プロトコル作成、試験実施、データ収集など、臨床開発の実施を包括的にマネジメントします。

データマネージャー

臨床試験で収集されたデータを管理し、統計解析担当者が分析できる適切な形に整理する専門家。データの質は、データマネージャーの仕事により担保されます。

統計解析担当者

データマネージャーが整理したデータに統計的解析を行い、その評価を行う専門家。医療機器の有効性や安全性を判断する重要な役割を担います。

薬事申請の専門家

薬事申請の戦略立案、申請書類の作成、規制当局とのコミュニケーションなどを担当する専門家。国内の規制要件だけではなく、主要各国の規制要件についても常に最新の情報をモニタリングしています。

臨床開発や薬事申請における各フェーズにおいて、必要かつ的確な専門的人材を迅速に提供できることが、CROの大きな強み。CROの人材を活用することで、固定的な人件費の削減や専門性の確保、臨床開発や申請におけるリスク軽減など、企業は様々なメリットを享受できます。

専門的なプロジェクト管理

臨床開発や薬事申請などを包括的に管理するため、CROはプロジェクトマネージャーによる専門性の高い管理を実施します。以下、CROのプロジェクトマネジメントの主な役割、およびプロジェクトマネージャーが担う主な管理内容を確認しましょう。

プロジェクトマネジメントの役割

プロジェクトマネジメントの役割を一言で言えば、臨床開発・薬事申請等のプロジェクトを円滑に進行させることです。

臨床開発や薬事申請のプロセスでは、計画立案や各種調整、監督、進捗確認などの多様な業務が関連し合いますが、これら業務間に混乱が生じないよう、かつ効率的に全体業務が流れるよう適切に管理することが、プロジェクトマネジメントの役割となります。

プロジェクトマネージャーによる管理内容

プロジェクトマネジメントの責任者がプロジェクトマネージャー。その主な管理内容の1つがプロジェクト全体のスケジュール調整で、全体的なプロジェクトのスケジュール調整はもちろんのこと、各タスクの開始日や終了日まで詳細に設定することもプロジェクトマネージャーの大事な業務となります。

また、プロジェクト進行中に発生しうるリスクの管理も、プロジェクトマネージャーが行う重要な業務の1つ。リスクの特定や発生確率、発生時の対応計画などを検討し、報告書にまとめてクライアントへ提出します。

技術的リソースの補完

臨床試験やデータ管理の技術サポート

CROは、クライアントに対して様々な技術的リソースを提供します。これら技術的リソースの活用を前提にすれば、クライアント企業は自前で技術的インフラを構築する必要がありません。結果、クライアント企業には、臨床試験等における大幅なコスト削減や運営の効率化がもたらされます。

CROが提供する主な技術的リソースの1つが電子データキャプチャ(EDC)。電子データキャプチャ(EDC)とは、臨床試験のデータをデジタルで収集し管理するシステムですが、このシステムを活用することで、効率的なデータ収集はもちろんのこと、エラーの早期発見や不正アクセスによるデータ改ざんリスクの低減も可能となります。

臨床試験において不可欠なシステムですが、企業が自前で導入するためには、相当なコストを覚悟しなければなりません。

またCROは、臨床試験の監視システムも一般的に提供しますが、このシステムの導入により、試験の進捗や問題発生のモニタリングを行うことが可能となります。

電子データキャプチャ(EDC)と同様、自前での導入には莫大なコストを要するシステムです。

ほかにもCROは、必要に応じた各種の技術的リソースを提供しますが、これら複数の技術的リソースを連動的に活用することで、臨床試験やデータ管理の大幅な効率化が実現します。

ITおよびデジタルヘルス対応リソース

デジタル医療機器やソフトウェア医療機器(SaMD)の開発を目指す場合、主に次の4つの技術的リソースが必要となります。

ソフトウェア開発プラットフォーム

ソフトウェア医療機器(SaMD)の開発では、効果的なアルゴリズム等の構築のためソフトウェア開発プラットフォームが必要です。

ハードウェアインテグレーション

多くのデジタル医療機器の開発では、モニタリング機器やセンサー等が適切に機能するようハードウェアとソフトウェアの統合が必要となります。

AI・機械学習システム

AI・機械学習を活用する医療機器の開発では、膨大なデータ等に基づく機会学習モデルのトレーニングや検証、およびその実装が必要です。

データ管理システム(クラウドプラットフォーム)

デジタル医療機器やソフトウェア医療機器(SaMD)は膨大なデータを取り扱います。データアクセスのリアルタイム性や共有を実現するため、クラウドプラットフォームを活用したデータ管理システムが必要となるでしょう。

以上の技術的リソースについては、CROがプロジェクトに即した適切な選択を行い、無駄のないサポートを実施します。

とりわけAI搭載の医療機器は膨大なデータを処理する必要があるため、CROは必要なアルゴリズムの構築・評価、機会学習モデルのトレーニングなどを実施。精度の高いAI医療機器の開発に向け、高度な専門性に基づいた詳細なサポートを実施します。

人材育成とトレーニングの提供

企業内人材のスキルアップ支援

CROは、臨床試験等の直接的なサポートを行うことに加え、希望する企業に対し、臨床試験等に関連する企業内人材の育成サポートも行っています。以下、CROが提供している主な人材育成サポート内容を3点ほど見てみましょう。

臨床試験全般

企画・計画段階から始まり、データ収集やモニタリング、データ解析等を含めた包括的なトレーニングが提供されます。

具体的なトレーニング内容の例としては、臨床試験の計画や実行・管理、被験者の募集方法や同意取得プロセス、データ収集やモニタリング・データ解析の技術など。トレーニングを通じ、国際的な基準に準拠した臨床試験全般のプロセス習得を目指します。

データマネジメント・統計解析分野

データマネジメントや統計解析に特化したトレーニングが提供されます。

具体的なトレーニング内容は、電子データキャプチャ(EDC)の管理手法、データの品質管理と解析手法、統計的手法によるデータ解析スキルなど。臨床データの信頼性を担保し、かつリスク評価にまで及ぶ極めて責任重大なプロセスとなります。

薬事申請分野

薬事申請のプロセスに特化したトレーニングが提供されます。

具体的なトレーニング内容は、基本的な申請書類作成の手順、国内外の規制当局における要件や申請要領の理解、臨床試験報告書の作成方法、技術文書の作成方法など。規制当局とのコミュニケーションスキルも含め、薬事申請に関連する全プロセスの習得を目指します。

コスト削減と効率化のメリット

外部リソースの活用によるコスト削減

CROからのトレーニングを通じ、自社内に臨床試験や薬事申請などの専門人材を育成することは可能ですが、CROの直接的なサポートを受けることに比べると、コスト高になる恐れがある点にご注意ください。

自社内に専門人材を育成するということは、すなわち、フルタイム人材に対する人件費が増加することを意味します。臨床開発担当者や統計解析担当者、薬事申請担当者など、多くのフルタイム専門人材を社内に抱えることとなるため、会社は大きな人件費の負担を抱えることになるでしょう。

もとより、社内に専門人材を育成するためには、CROに対して莫大なトレーニング代を支払わなければなりません。全体の費用対効果を考えれば、自社内に専門人材を育成することが合理的かどうか、企業担当者様は熟考する必要があるでしょう。むしろ、必要に応じて外部のCROを利用するほうが、合理的な経営判断とも言えます。

また、医療機器の開発におけるプロセスでは、各フェーズにより異なる専門人材が対応することとなります。これらフェーズの違いに応じ、必要なリソースだけを柔軟に利用できる点も、CROを活用するメリットになるでしょう。

さらに、グローバル展開を含む大きなプロジェクトを企画する際には、自社で育成した専門スタッフのみでは対応できない可能性もあります。経営戦略の規模に合わせて柔軟にサポートを受けられる点も、CROを利用する優位性の1つになるでしょう。

まとめ

当ページでは、企業のリソース不足に対し、医療機器CROが提供している保管サービスを中心に解説しました。

CROの提供するサービスは、企業の開発プロジェクトにおける様々なプロセスを円滑に推進します。臨床開発や薬事申請における専門人材を社内に育成する選択肢もありますが、コスト面や稼働の柔軟性などを考慮すれば、必ずしもベストな選択肢になるとは限りません。可能な限り低コスト・省力・迅速に医療機器を市場投入したいならば、CROのサポートを選択することが合理的と言えるでしょう。CROは、医療機器開発プロジェクトの成功に向けた心強いパートナーです。

THREE SELECTIONS
⽤途で選ぶ医療機器CRO3選
医療機器向けのCROとしてサービスを提供している会社の中から、「医療機器(デジタル領域)」「医療機器(器具‧用品)」「細胞治療製品」の3つの用途に分けて、おすすめの会社を紹介します。
医療機器(デジタル領域)
開発なら
マイクロン
マイクロン
引用元:マイクロン公式HP
(https://micron-kobe.com/)
対象
  • スマホ、PCを介した医療系ソフトウェア
  • 診断、治療目的のヘルスケアアプリ
  • AIを使った疾患の予測、診断プログラム など
CROの特徴
  • 40件以上のプログラム医療機器(SaMD)の開発実績、アイデアを形にするべく支援
  • CTやMRI、ヘルスケアアプリまで、様々な診断・治療プログラムを開発
医療機器(器具‧⽤品)
開発なら
シミック
シミック
引用元:シミック公式HP
(https://www.cmicgroup.com/)
対象
  • 血管吸引カテーテル、ステントグラフト等の機械器具
  • 造影剤用輸液セット、インスリン注入器等の医療用品
  • インプラント、歯科用ユニット等の歯科材料 など
CROの特徴
  • 30種類以上の医療機器の受託開発実績、多種多様な製品開発が可能
  • 医薬品と医療機器、化粧品と医療機器等、分野を超えた同時開発が可能
細胞治療製品
開発なら
IQVIAサービシーズ
ジャパン
IQVIAサービシーズジャパン
引用元:IQVIAサービシーズジャパン公式HP
(https://www.iqvia.com/ja-jp/locations/japan)
対象
  • 皮膚再生製品
  • 神経系再生製品
  • 循環器再生製品 など
CROの特徴
  • 再生医療分野において166以上の試験、6,600例以上の実績
  • 国内外の再生医療等製品の開発・薬事を熟知しているグローバル企業

【このサイトに掲載する会社の選定条件】
2023年2月7日時点、「医療機器 CRO」とGoogle検索して表示された企業、および一般社団法人日本CRO協会の会員企業の中から医療機器向けのCROとしてサービスを提供している22社を掲載しています。
【3選に掲載する会社の選定条件】
22社の公式HPを調査し、以下の条件で3社を選出しました。実績・種類はすべて2023年4月時点のものです。
マイクロン…SaMDの実績(40件)が最も多い。
シミック…第一種製造販売業許可(許可番号:13B1X10146)を取得しており、受託開発した医療機器の種類が最も多い。
IQVIAサービシーズジャパン…再生医療分野において166以上の試験、6,600例以上の実績があり最も多い。