医療機器の開発と市場投入を目指すためには、その前提として、臨床試験による有効性・安全性の確認が必要です。また、単に臨床試験を終えれば良いわけではなく、臨床試験の結果を詳細にまとめた報告書を作成し、規制当局からの承認を得る必要もあります。
これら一連のプロセスの遂行は、たとえリソース十分な大手企業であっても、決して簡単ではありません。なぜならば、臨床試験の準備や実行、承認申請には極めて高い専門性が要求されるためです。中小企業やスタートアップ企業であれば、さらにこれらのハードルが高くなるでしょう。
CROは、臨床試験に関連する全行程を効率良くサポートしてくれる機関。リソース不足の企業に対し、臨床試験に関連するコストと時間の大幅な削減を実現します。
臨床試験の計画段階においてCROは様々なサポートを行っていますが、中でも特に重要なサポートが以下の3点。順次詳しく確認します。
はじめに、企業はCROに対し試験の目的(予防、治療、診断など)を明確に伝えます。CROは目的に応じ、効果的と考えられるアプローチを提案。有意差を確認するために必要なサンプルサイズの算出、エンドポイントの設定なども企業の協力を仰ぎながらサポートします。
なお、設定したエンドポイントについては、規制当局の基準に適合しているかどうかも評価。この評価は承認申請における重要なエビデンスとなります。
プロトコル作成のフェーズでは、企業から提出された臨床情報などを基に、CROが初期ドラフトを作成。CROの臨床試験チームや医療専門家、統計専門家、規制担当者などから、作成した初期ドラフトの評価を受けます。
評価において指摘された点について、規制当局のガイドラインに準拠しながら内容を慎重に改定。改定されたプロトコルは、臨床試験申請書類の1つとして提出されます。
当該試験における患者リクルートや試験デザイン、各種規制などのリスクレベルについてCROが評価し、各リスクを軽減するための具体的な対策を講じます。
一般的な対策の例としては、たとえば患者リクルートに関するリスクの場合、CROは患者リクルート専門チームを構成し、臨床試験場所や当該地域の医療機関、患者団体などを通じて実効性の高い患者リクルート戦略を構築。リクルート開始前に予備調査を実施することもあります。
また、規制リスクへの対策として、CROは事前に規制当局と協議を行うことも少なくありません。試験デザインが規制に準拠しているかどうかを確認し、二度手間、三度手間をなくすためです。
並行し、CROは臨床試験の実行可能性についても評価します。たとえば臨床試験対象地域における患者数や対象疾患の有病率を確認し、患者リクルート面からの実行可能性の評価を行ったり、臨床試験地域での施設や医療機関、スタッフのスキルなどを確認し、施設等の条件面からの実行可能性の評価を行ったりします。
CROは、規制に準拠しながら承認取得を目指す企業に対し、国内外を問わず各種のサポートを行っています。
たとえば日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)向けの申請においては、「申請前相談」に向けた試験デザインや製造プロセス等の資料作成などをサポート。ほかにも、PMDAへの質問の明確化や申請前相談終了後の議事録作成などもサポートしています。
また、FDA(米国食品医薬品局)向けの申請においては、「Pre-Submission」に向けた資料作成や質問事項の要点整理、FDAからのフィードバックに対する実行などをサポートしています。
具体的な承認取得に向けては、規制当局が定めるフォーマットに従い必要書類の準備や、FDA・EMAへの申請におけるeCTD(電子共通技術文書)の作成などをサポート。他にも、承認プロセスにおける規制当局とのやり取りの支援や、承認取得後の各種フォローアップなどを行っています。
臨床試験段階におけるCROの主な役割として、以下で主な3点を確認してみましょう。
臨床試験実施の前に、CROは臨床試験責任医師や臨床試験実施施設と打ち合わせを行い、緊密な連携体制を構築します。とりわけ臨床試験責任医師は重要な役割を持つことから、CROは臨床試験責任医師に対し、プロトコルや規制要件の理解を促した上で必要な研修を行います。
臨床試験の開始後は、計画通りに段取りが進むようCROが臨床試験責任医師を細やかにサポート。予期しない事態が発生した場合には臨床試験期間の遅れを抑えるため、追加サポート等を提供します。
被験者募集においては、患者リクルートの計画策定からスクリーニング、登録のサポートまで全面支援。被験者のドロップアウトを防ぐため、その満足度向上にも努めます。
承認申請の要でもある臨床試験のデータ収集については、後述する電子データキャプチャ(EDC)システムを活用した管理を実施。データ解析や報告書の作成なども含め、CROが細やかにサポートします。
臨床試験データの品質や信頼性を担保するため、複数のツールを使って情報の正確性・一貫性の確保に努めています。
使用している主なツールの1つが、CROが電子データキャプチャ(EDC)システム。臨床試験側で直接データを入力することで、各種情報をリアルタイムで入手できるシステムです。紙ベースによるデータの記録に比べてデータ収集が効率的となり、また記録ミスの低減にもつながります。
もう1つの主なツールが、モニタリングツール。データの品質に影響を与える可能性のある要素を予測するリスクベースモニタリング(RBM)や、リアルタイムで異常を検出する中央モニタリングなどを通じ、一貫した安定性のもとでの臨床試験プロセスをサポートします。
これらツールを使用して収集する各種データは、CROからクライアントへリアルタイムで報告されます。臨床試験の進捗状況や潜在的リスクなどをクライアントと共有し、透明性を確保しながら臨床試験の実施を支えます。
臨床試験においては、被験者の安全性監視、および重大な有害事象(SAE)が発生した際の対応も重視されなければなりません。
被験者の安全性監視について、事前に策定した安全性モニタリング計画に基づき、臨床試験の安全性データを定期的に収集。治験責任医師とCROが情報共有しながら、継続的に安全性監視を行います。
また、被験者の生命に危険を及ぼすレベル、あるいは恒久的障害を追うレベルの重大な有害事象(SAE)が発生した場合には、通常、試験サイトからCROへ24時間以内に状況が報告されます。
報告を受けたCROは、臨床試験とSAEとの因果関係を評価。仮に因果関係が認められれば、以後の臨床試験に重大な影響が及ぶ可能性もあります。
安全性監視とSAEへの対応については、常にCROが迅速に対応できる体制を整備しています。この体制の整備があればこそ、被験者の安全確保や臨床試験の信頼性の向上、コスト削減、試験プロセスの効率化、規制に対する罰則回避など、様々なメリットがもたらされることとなります。
臨床試験後におけるCROのサポート内容について、以下で主な2点を確認しましょう。
臨床試験の終了後、CROはデータクレンジングを行い、データの不整合や欠損などがあれば正しく修正。修正等を経たデータをCROの解析チームへと回し、事前に策定済みの計画に基づいた統計的手法でデータ解析を実施します。
解析結果を踏まえ、CROが対象となる試験薬や治療法の有効性・安全性などを評価。評価を経た結果を報告書(CSR: Clinical Study Report)にまとめ、クライアントや規制当局へ提出します。
なお、CSRとは、臨床試験の目的や方法、結果、評価などが詳細に記載された報告書のこと。国際的なガイドラインに従って正確に作成される必要があります。
承認申請に先立ち、CROは規制当局が求める要件等を正しく理解し、その基準に適合する申請書類の作成・整備をサポートします。
申請書類が提出された後も、規制当局とクライアントとのやり取りを継続的にサポート。追加資料の提出要請があれば、迅速にCROが対応します。
また、少しでも審査プロセスが効率的に進行するよう、CROは申請書類の不備がないよう綿密な事前確認を行います。もとより、臨床試験の効率的なワークフローの事前構築や臨床試験とデータ解析とのリアルタイム解析、規制当局とのコミュニケーション管理など、試験から審査までの全体像を踏まえた総合的なサポートを通じ、承認に向けたプロセスの効率化を図ります。
臨床試験や承認審査に際し、CROを活用する主なメリットを2つほど見てみましょう。
臨床試験の実施から承認審査のプロセスでは、様々なフェーズにおいて高度な専門知識・経験が求められます。
たとえば、臨床試験を行うための大前提となる患者リクルートについて、専門性や経験のない製薬会社等が自力で行うことは困難でしょう。臨床試験に必要な施設や臨床試験責任医師の選定も、専門性や経験がなければ動きようがありません。
もとより、安全性監視等も含めた臨床試験そのものの工程を自社のリソースのみで対応できる企業は、極めて限られていることでしょう。規制に適合させた各種書類を整備し最終的に承認を得るまでのプロセスでは、また別途の高い専門性が要求されます。
これら高難度の工程をサポートする専門集団がCROです。CROの専門性と経験を借りることで、臨床試験から承認まで効率的な進捗が期待できます。
臨床試験や承認申請には高い専門性が要求されますが、CROを活用することで、自社内に専門スタッフを常駐させる必要がなくなります。人件費削減はもちろん、人材育成のためのトレーニングコストの削減にもつながるでしょう。
また、CROはEDC(電子データキャプチャ)システムや安全性データ管理システム、リスクベースモニタリング(RBM)などの高度なシステムを導入済みです。CROを活用すれば、自社でこれらのシステムを整備する必要がなくなるため、大幅なコスト削減につながります。
加えてCROには、臨床試験を迅速に行うためのスキルや、規制当局との円滑なコミュニケーションスキル、的確な報告書作成スキルなどが蓄積されているため、臨床試験の準備段階から承認申請に至るまでの大幅な時間削減も期待できます。時間が削減されれば、その分だけ人件費等のコストも削減される形となるため、依頼企業にとっては大きなメリットにつながるでしょう。
製薬会社やバイオテクノロジー会社、医療機器開発会社等が円滑に臨床試験を行うためには、計画段階・実施段階・申請段階の各フェーズにおいて、極めて高い専門性が求められます。自社のリソースを中心に対応可能な大手企業であれば、各フェーズを滞りなく進捗させられるかもしれませんが、多くの企業にとって、自社のリソースのみで十分に対応することは難しいのではないでしょうか。
コスト削減を重視して無理に自社のリソースのみで対応しようとすれば、各フェーズにおける遅延や追加対応等から、逆にコストを上げてしまう恐れがあります。可能な限り低コストかつ迅速に医療機器等の市場投入をお考えの企業様は、CROの専門性に頼ることが無難です。CROとの密な連携こそ、プロジェクト成功の鍵を握ると考えてください。
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【このサイトに掲載する会社の選定条件】
2023年2月7日時点、「医療機器 CRO」とGoogle検索して表示された企業、および一般社団法人日本CRO協会の会員企業の中から医療機器向けのCROとしてサービスを提供している22社を掲載しています。
【3選に掲載する会社の選定条件】
22社の公式HPを調査し、以下の条件で3社を選出しました。実績・種類はすべて2023年4月時点のものです。
マイクロン…SaMDの実績(40件)が最も多い。
シミック…第一種製造販売業許可(許可番号:13B1X10146)を取得しており、受託開発した医療機器の種類が最も多い。
IQVIAサービシーズジャパン…再生医療分野において166以上の試験、6,600例以上の実績があり最も多い。