医療機器の開発・承認プロセスには、非常に複雑な規制が設けられています。日本国内における規制自体も大変複雑ですが、規制内容は国により異なることから、グローバル展開を目指す企業にとっては、その複雑さが輪をかけこれら各国の規制に準拠しながら効率的に医療機器の開発・承認取得を目指すためには、CROのサポートを受けることが非常に有効です。当ページでは、複雑かつ高い専門性が求められる各国の規制を前に、CROが提供している具体的なサポート内容をご紹介しています。
医療機器承認における規制要件は国により異なるため、グローバル市場への展開を想定している企業は、CROから国別で異なるサポートを受ける形となります。
たとえば日本のPMDAの場合は、主にGCPに準拠した臨床試験の計画策定や実施、承認申請書類の作成、PMDAとのコミュニケーションなどをサポート。アメリカFDAの場合は、主に510(k)やPMAなどの申請ルートの選定、当局の規制に準拠した臨床データの収集や申請書の作成、FDAとの各種交渉などをサポート。欧州のMDRの場合は、主に臨床評価報告書(CER)の作成や市販後臨床フォローアップ(PMCF)の作成などのサポートを行います。
CROは、規制の異なる各国の要件に精通する専門家です。医療機器のグローバル展開を目指す企業においては、CROのサポートなくして承認を獲得することはハードルが高いと考えたほうが良いでしょう。
医療機器は、そのリスクの程度を基準に「クラスⅠ」「クラスⅡ」「クラスⅢ」の3種類に分類されますが、承認申請を行う国の規制により、クラス別で承認ルートが異なります。クラス分類や承認ルート選定に関連するCROの主なサポート内容を確認しましょう。
承認ルートを選定するにあたり、まずCROは対象医療機器のクラスを特定させるためのサポートを行います。
クラス分類においてCROは、各国の規制機関のガイドラインを参照の上、機器のリスク等を考慮して適切に評価。すでに市場で販売されている類似製品のクラスも参考に、対象医療機器を妥当なクラスへ分類します。
医療機器の承認ルートはクラスにより異なるため、適切な承認ルートを選択できるようCROがサポートします。
たとえばクラスⅠの医療機器は、登録のみで市場へ投入可能ですが、クラスⅡの医療機器については510(k)申請が必要となります。クラスⅢの医療機器は、PMDAやPMA申請が必要です。
医療機器の開発段階からCROがリスク評価を実施。想定される各クラスに応じ、適切なリスク管理策を企業へ提案します。臨床試験におけるトラブルや市場投入後における想定外の事態を未然に防ぐため、クラス別でのリスク管理は大変重要なサポートになります。
CROは、PMDAの「事前相談」やFDAの「Pre-Submission(事前提出)」をサポートする形で、企業と規制当局とのコミュニケーション円滑化を促進しています。
規制当局による申請の却下を防止するためには、事前に規制当局の期待や要件を明確に理解しておく必要があります。あわせて、規制当局が求める必要データや試験方法も把握しておかなければなりません。
これらの重要なベース情報を入手する機会が、まさに事前相談。規制当局の要求を忠実に実行し、承認取得に向けて効率的なプロセスを踏むため、事前相談は大変重要な位置づけとなります。
事前相談の実施に向け、CROはプレゼン用の資料作成等をサポートします。また、予想される規制当局からの質問に対し、的確な回答を提示できるようシミュレーションも行います。
事前相談後に規制当局からフィードバックが行われた場合には、その内容や趣旨を正しく分析し、企業に対して次への適切なステップを提示。承認取得に向け、無駄のない一歩一歩を導きます。
医療機器の承認取得にいたるプロセスでは、規制当局との話し合いが必要になる場面も少なくありません。話し合いの内容は、しばしば非常に専門性が高く、承認申請を行う企業の担当者が直接対応することは困難な場合も少なくないでしょう。
そのような時に頼りになる存在がCRO。CROは企業に代わって規制当局との話し合いを行える立場なので、専門的な話し合いの場でCROの力を借りることにより、企業は承認取得にいたるまでの負担を大きく軽減させることができます。
CROによる規制当局との話し合いに関するポイントを2つほど見てみましょう。
CROは、PMDA(日本)やFDA(アメリカ)、MDR(欧州)などの規制に精通している専門家なので、規制当局とのコミュニケーションで提示された求めに対し、適切に対応することができます。
一般的な規制に対する対応だけではなく、臨床試験等に基づいた個別のフィードバックに対しても、規制当局の意図を正確に理解して迅速に対応することが可能です。
規制当局との話し合いにおいて、企業の負担を軽減させることを目的に、しばしばCROは規制当局に譲歩を求める交渉を行うことがあります。たとえば臨床試験に対する規制当局の要求が厳しい場合、合理的な範囲内において要求内容を緩和させられないかどうかを交渉します。
企業が直接規制当局と話し合いをした場合、交渉の肌感覚が分からないため、規制当局から譲歩を引き出すことは難しいでしょう。
臨床試験の設計フェーズにおいて、CROは規制対応を見据えた多面的な支援を行っています。支援の主なポイントを確認してみましょう。
臨床試験に関する規制は国により異なるため、複数国での承認申請を目指す企業に対し、CROは対象国の規制に準拠した臨床試験の設計をサポートします。具体的には、試験参加者の選定基準、臨床観察期間、評価の指標などに関し、各国の規制に基づいた適切な臨床試験デザインを行います。
臨床試験において発生可能性のあるリスクについて、危険性のレベルや予想される発生頻度などを想定。モニタリングシステム等の具体的なツール導入を含めた監視体制など、規制当局の基準に沿った安全な臨床試験の設計を支援します。
臨床試験の有効性を示すデータを正確に取得するため、対象の臨床試験において有効と考えられる解析手法や統計的手法の選定、その実行プロセス等について、規制当局の基準に基づいた設計をサポートします。
臨床試験の結果の信頼性を担保するため、当該臨床試験に必要と考えられるツールの選定や導入などの設計をサポートします。主に電子データキャプチャ(EDC)システムやモニタリングシステムなどの適切な導入を設計します。
臨床試験の設計段階では、特に安全性と有効性に関する設計は大変重要なプロセスとなります。
医療機器が市場に投入された後も、対象医療機器における規制への対応は必要であり、CROはこの対応についてもサポートを継続します。主なサポート内容として、以下2点を確認してみましょう。
市販後監視(PMS)とは、市販後の対象医療機器における安全性を確認するためのプロセスのこと。CROは、対象医療機器の使用により生じた副作用等の情報のフィードバックを受け、統計的にまとめた上で規制当局へ提出します。
また、市販後のリスク発生時に対して迅速かつ適切に対応できるよう、あらかじめリスク管理計画(PMP)の策定を行います。
対象医療機器の使用により不具合が発生した場合、企業はその情報について速やかに規制当局へ報告するよう義務付けられています。この報告業務に関し、CROは各種のサポートを行っています。
具体的なサポート内容の1つが、不具合報告システムの設計・導入。不具合に関する情報について、規制当局へ迅速に報告するプロセスをシステム化する支援です。
また、不具合に関する規制当局への報告書の作成もCROのサポート範囲内。各国の規制当局が求めるフォーマットに従い、不具合の状態を正確に報告書へまとめ、期限内にCROが規制当局へ提出します。
医療機器の市場投入に際し、各国の規制に準拠した承認を得ることは基本的な前提となりますが、加えて国際規格(ISO規格)の認証を得ることで、さらに対象医療機器の信頼性が高まります。この国際規格の認証取得についても、CROは各種のサポートを提供しています。
医療機器メーカーに対してCROが認証取得の支援を行っている主な2つの国際規格を確認しましょう。
医療機器の品質マネジメントシステムに関するISO規格です。機器の設計や開発、製造、保守、販売後の対応等について、CROはISO 13485に準拠したシステムおよびプロセス管理等の構築をサポートします。
医療機器のリスクマネジメントに関するISO規格です。CROは、対象機器の使用で起こりうるリスクの特定や評価、モニタリング、リスク発生時の対応等に関する具体的なプロセスの構築をサポートします。
なお、ISO規格の認証を証明する書類は、医療機器の承認申請における書類の一部として提出することが認められています。ただし、提出における形式はPMDA(日本)やFDA(アメリカ)、MDR(欧州)などにより異なるため、CROがそれぞれの国の規制に従った形式に落とし込んで提出する形となります。
医療機器の承認申請に関する規制は大変煩雑です。日本国内における承認申請自体も煩雑ですが、国によって規制が異なる点で、グローバル展開を目指す企業にとっては、承認取得のハードルがさらに上がります。
もとより、承認申請にいたる前の臨床試験自体も規制に準拠しながら行わなければなりません。効率的な承認取得に向け、規制当局とのコミュニケーションや交渉も必要となるでしょう。はれて医療機器の市場投入が実現しても、市販後監視(PMS)等の規制が続きます。
これら一つ一つの規制に対して企業単体で対応し続けることは、とりわけ中小企業やスタートアップ企業において、リソースの点から見ると現実的ではありません。CROのサポートのもと、規制対応戦略を策定した上で効率的に医療機器の開発・承認・運用を目指していくことが望まれます。
【このサイトに掲載する会社の選定条件】
2023年2月7日時点、「医療機器 CRO」とGoogle検索して表示された企業、および一般社団法人日本CRO協会の会員企業の中から医療機器向けのCROとしてサービスを提供している22社を掲載しています。
【3選に掲載する会社の選定条件】
22社の公式HPを調査し、以下の条件で3社を選出しました。実績・種類はすべて2023年4月時点のものです。
マイクロン…SaMDの実績(40件)が最も多い。
シミック…第一種製造販売業許可(許可番号:13B1X10146)を取得しており、受託開発した医療機器の種類が最も多い。
IQVIAサービシーズジャパン…再生医療分野において166以上の試験、6,600例以上の実績があり最も多い。