こちらの記事では、「デジタルセラピューティクス(DTx)」について紹介しています。デジタルセラピューティクスとはどのような役割が期待されているのかといった点や、海外での事例などについて調査してまとめています。
デジタルセラピューティクスとは「DTx(Digital Therapeutics)」とも表記されるもので、「治療用アプリ」「デジタル治療」「デジタル薬」とも呼ばれている技術を指します。明確な定義はありませんが、疾患などの治療や管理、予防を行うために、医療的に介入して、治療効果をもたらせる医療用ソフトウェアをいいます。
デジタルセラピューティクスは、医療行為である点が特徴のひとつ。単に健康増進を目的としたものとは異なり、保険診療である点が大きなポイントとなってきます。また、このデジタルセラピューティクスは、SaMD(プログラム医療機器)に内包される概念となっている点も特徴です。
デジタルセラピューティクスの導入により、さまざまな役割を果たすことが期待されています。
その1つ目として「診療の質向上」が挙げられます。デジタルセラピューティクスが導入された場合には、病院や診療所以外でもデータの直接入力や機器によるデータの取得ができるようになります。この点から、医療機関で行った検査以外でも患者の診療情報を取得することが可能となるため、診療の質の向上が期待できるといえます。
さらに、デジタルセラピューティクスによる疾患コントロールができるようになれば、これまで内服や吸入などで使用していた「医薬品の減少」につながることも期待できますし、ひいては「国内の医療費の減少」にもつながる可能性があると考えられています。
以上のように、デジタルセラピューティクスはさまざまな可能性を持っているため大きな期待が寄せられている技術となっています。
デジタルセラピューティクスは、非常に大きな成長が期待できるといわれている市場です。世界のデジタルセラピューティクス市場は年率25〜30%の成長率が見込まれていますが、日本における市場も世界と同程度の水準での成長が見込まれています。
例えば第一三共株式会社が株式会社CureAppとともに乳がん支援治療アプリの開発を手がけているといったように、日本でもさまざまなデジタルセラピューティクスの開発が行われています。しかし、日本は海外に遅れをとっている現状があります。
その理由として挙げられているのが、日本ではデジタルセラピューティクスに特化した薬事承認スキームが確立されておらず、薬事承認までに時間がかかってしまうことがまず1点目の課題です。さらに、また高齢者の割合が大きい日本にとっては、治療用のアプリの使い方がわからないなど利用者のデジタルリテラシー面での課題があると考えられています。
2020年11月、厚生労働省では「プログラム医療機器実用化 促進パッケージ戦略(DASH for SaMD)」を策定して、SaMDの実用化促進のための戦略を打ち出しています。
そして、2021年4月には、医薬機器該当性や開発、保険適用に関する一元的な相談窓口を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に一元化した上で、PMDA内にSaMDの審査や相談に特化した専門組織を設置。このことによって企業のSaMD開発をサポートしています。
また、2021年3月には、医療機器プログラムへの該当性判断に係る明確化・精緻化を目的として「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」を公表。さらに、医療機器該当性判断事例とプログラム医療機器事例データベースの公表も行われています。
ここまで述べてきたように、デジタルセラピューティクスには非常に大きな期待が寄せられていますが、導入を行うにあたってさまざまな課題があるとされています。例えば、下記のような課題が挙げられています。
まず1つ目の課題が「個人情報の扱い」です。デジタルセラピューティクスで扱う情報は、個人の健康に関する情報といったセンシティブなデータであるため、どのようにデータやプライバシーの保護を行っていくかが問題となってきます。さらに、データの保護を行った上で医療機関のカルテとどう連携するかなどもポイントとなってきます。
また、2つ目の課題としては「稼働端末の確保と操作」が挙げられています。現状、デジタルセラピューティクスはスマートフォンなどで使用できるアプリの形で提供されています。つまり、デジタルセラピューティクスを利用する人が稼働端末を持っていることが条件となってくるわけですが、高齢になるほどスマートフォンの保有率が低く、どのように稼働端末を確保するのかが課題となってきます。
さらに、端末を持っていたとしても本人が正しくスマートフォンを使用できるかどうか、という問題もあります。操作に慣れていない場合には、デジタルセラピューティクスを活用した治療を進めることが難しいという状況も考えられます。
海外においては、さまざまな領域でデジタルセラピューティクスの開発や普及が進んでいる状況です。例えば、糖尿妙やうつ病、アルコール使用障害などの領域で利用されており、ここではその一例として糖尿病領域での事例を紹介します。
アメリカとカナダでは「Bluestar®」というアプリが導入されています。このアプリは、血糖自己測定器で取得した血糖値や食事・服薬・運動に関する状況の管理や追跡を行えます。このような管理を行っていく中で、データに基づいた指導を行ったり、治療を続けていく上でモチベーションの維持につながるようなアドバイスの表示が行われることにより、疾患管理のサポートにつながると期待されています。また、こちらのアプリは日本でも医療機器として製品化が進められており、2023年度中には日本で臨床試験が開始予定と発表されています。この医療機器の開発が日本で進められれば、治療の選択肢の幅が広がることが期待できるといえるでしょう。
【このサイトに掲載する会社の選定条件】
2023年2月7日時点、「医療機器 CRO」とGoogle検索して表示された企業、および一般社団法人日本CRO協会の会員企業の中から医療機器向けのCROとしてサービスを提供している22社を掲載しています。
【3選に掲載する会社の選定条件】
22社の公式HPを調査し、以下の条件で3社を選出しました。実績・種類はすべて2023年4月時点のものです。
マイクロン…SaMDの実績(40件)が最も多い。
シミック…第一種製造販売業許可(許可番号:13B1X10146)を取得しており、受託開発した医療機器の種類が最も多い。
IQVIAサービシーズジャパン…再生医療分野において166以上の試験、6,600例以上の実績があり最も多い。